こんばんは、さるあみです。
スーパーや酒屋さんに行くとかならずと言っていいほどあるのが、
『気にはなるけど買う気持ちがつくれない日本酒』
名前で気になる。
ラベルで気になる。
珍しさで気になる。
価格で気になる。
そして、味が気になる。
気になる理由はさまざまありますが、1000円を超える商品を買うには勇気がついて回ります。
まして、ほかにも日本酒は並んでいるので、優先順位はどんどん落ちていってしまうものです。
「余裕があるときに……」
そのときは思っても、いざ余裕ができたときに買う人は少ないのではないでしょうか。
実は、私にとって『田从』がそう。
いつか余裕があるときに……と思っていたら、余裕のあるときなんて来ないんです。
もはや思い立った瞬間が勝負でした。
ですので、手にとった今日、実際に飲んでみた感想をここに残していきます。
ぜひ、最後まで楽しんでいってくださいね。
『田从』をつくる舞鶴酒造とは
『田从 純米酒』は、横手市平鹿町にある舞鶴酒造がつくる日本酒です。
舞鶴酒造は、今でこそ当たり前のなった『純米酒のみをつくる酒造』という試みに、いち早く挑戦しています。
また、秋田県ではじめて『女性杜氏を迎え入れた酒造』としても有名です。
しっかりと根が張った伝統のなかで、『迎える側』はもちろん、『迎えられる側』にとっても簡単ではない選択だったはず。
『全量純米』『女性杜氏』という新しい試みが、今日の舞鶴酒造をつくっているといえそうです。
舞鶴酒造の日本酒の大きな特徴は、熟成の期間にあります。
なんと、すべてのお酒が3年~5年熟成。
今回飲んだ『田从 純米酒』には年数の表記はありませんが、3~5年は寝かせた純米酒だと考えられます。
ちなみに、『田从 純米酒』と表記してきましたが、実際はもっともっと長いです。
正式名称は、
『天然琵琶清水 減農薬特別栽培米仕込 田从 米の秋田 純米酒』
飲む人の体にやさしい、厳選された米。そして、水をつかった純米酒です。
精米歩合は70%と、精白の度合いは低め。
3~5年寝かせていることと低い精米歩合から、ガツンとくる米の味わいに丸みがあるのではないかと推測できます。
「なんらかのクセは覚悟したほうがいいかも……」
そんな期待と不安ともって、感想に移ります。
『田从 純米酒』は「昔ながら」を飲みやすくした1本
結論からいいます。
『若い世代にはまだ早いです』
香りには厚みと、わずかにツンとした雑味があります。
味わいは、甘さも辛さも少なく、昔ながらの重み。
あとからくるスッキリ感が、現代にマッチしているように感じます。
と、ここまでは常温で飲んだ感想です。
では、燗で飲むとどうだったのか。
燗のなかには、うまみと酸味。
苦み、渋みが合わさって複雑な深みが生まれます。
なんとも不思議な飲みやすさです。
正直にいえば、好みの味わいではありません。
いわば、大人の味です。
老いとともに理解が深まる1本、という印象。
販売の側からみれば、ターゲットを絞った1本という印象です。
どの世代に向けた日本酒なのかが明確な、しっかりとした日本酒でした。
『田从 純米酒』の商品情報
- 原料米:減農薬特別栽培米
- 仕込み水:天然琵琶清水
- 精米歩合:70%
- アルコール分:15度
※おすすめの飲み方:常温~55℃のとびきり燗まで幅広く
まとめ:『田从 純米酒』は燗で深まる昔ながらの味わい
最後に、ひとつだけお伝えしたいことがあります。
実は、舞鶴酒造は現在、ほかの蔵を借りて酒造りをおこなっている状況です。
それは、天災による被害。
平成18年の18年豪雪、そして、東日本大震災により、蔵が倒壊してしまったことによります。
ですので、もしかしたら現在販売されている『田从』は、かつて『田从』ではないのかもしれません。
いくらノウハウを持参しても、所変われば思うようにはいかないもの。
あくまでも推測に過ぎませんが、杜氏は今までもずっと戦われてきたのだと思います。
『全量純米酒』
『女性杜氏』。
どちらも今でこそ当たり前に見かける試みとなりましたが、20年近く前となれば話は別です。
斬新と受け止められたか、はたまた無謀と受け止められたか。
今に至るまでの道のりは険しかったはずです。
そんな険しい道のりのなか、蔵の倒壊、新型コロナが追い打ちをかけています。
どうか、負けないでください。
私は、現存する酒蔵にひとつも欠けて欲しくはありません。
ぜんぶあっての酒どころ。
ぜんぶあっての秋田県なんです。
酒どころのイメージができたのは、今ある酒蔵の方々のおかげなんです。
だから、負けないでほしい。
ここで応援して届くものでもありませんが、応援しています。
それでは、今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。