おはようございます、さるあみです。
みなさんが日本酒のレビューを見るときって、どんなときですか?
「欲しい日本酒を調べていて偶然」
「なんとなく」
たぶんそういう人もいるにはいるのだと思いますが、おそらく少数派。
ほとんどの人は、
『目の前にその1本があるから』
もしくは、
『いまいるお店のメニューにあるから』
この2つが主な理由なのではないでしょうか。
けど、日本酒のレビューって探しても無いんですよね。
正確には、
だからなかなか「飲んだ人の感想」にたどり着けません。
もちろん醸造元の説明がいちばん正しいのですが、正しいだけが情報ではないじゃないですか。
特に嗜好品の場合はそう。
誰しもが同じように感じるとは限りません。
となると、必要なのは読み取る力。
それも、自分で読んで情報を得る力が必要になってくると思いませんか?
というわけで今回は、『秋田の地酒で学ぶ!ラベルから日本酒の味ってわかるの?【精米歩合編】』をお送りします。
この記事を読むことで、精米歩合と、それによる違いについて詳しくなれます。
同じ精米歩合でも幅があることがわかるおもしろい記事となっていますので、最後までゆっくりしていってくださいね。
それでは、いってみましょう。
- そもそも精米歩合ってなに?
- ここに注意!精米歩合はこう読み取るべしっ
- 実例:精米歩合70%『まんさくの花 美郷錦70』
- 実例:精米歩合60%『山内杜氏 特別本醸造』
- 実例:精米歩合60%『阿櫻 純米吟醸 無濾過原酒 AKITA雪国酵母UT-1 ゆきのふスペシャル』
- 実例:精米歩合50%『春霞 栗ラベル白』
- 実例:精米歩合35%『雪の茅舎 大吟醸 花朝月夕』
- 番外編:『太平山 天巧50・40・20』飲み比べ
- まとめ:結局は好み。精米歩合はあくまでひとつの目安に過ぎません
そもそも精米歩合ってなに?
日本酒のラベルにはかならずと言っていいほど書いてあるのが精米歩合。
精米歩合には〇〇%というように、パーセンテージが書かれています。
この数字っていったい何を意味するんでしょうか。
数字が表すもの。それは、
“一粒のお米をどれだけ磨いたか”
一般的な食卓に並ぶ白米の精米歩合は90%ほど。
つまり、玄米の周囲を10%だけ削ったものになります。
茶色い部分を落としただけ、といったところです。
ところがどっこい。
酒米の場合はぜいたくにいきます。もっと削る。もっと磨く。
「なんでそこまでするの?もったいなくない?」
と思われた方、ホントそのとおりなんです。
削れば削るほど粒は小さくなるし、一本の日本酒をつくるのにより多くの酒米を必要とします。
さらにはコスト。精米するにもコストがかかります。
削れば削るほど、相応の機械と時間を浪費することになってしまうんです。
では、なぜ削るのか。
手間ひまかけてまでなぜ削るのか。
それは、
酒米は中心ほど旨味が強いからです。
実はここだけの話、玄米の外側って栄養が豊富。
たんぱく質、脂質、ビタミン。体に良いものが詰まってるんです。
でも、日本酒にとってはむしろ有害。
人間にとっては必須ともいえる栄養素が、雑味を生んだり香りのバランスを崩す原因になってしまうんです。
だから磨く。
磨けば磨いただけ味わいがクリアーになり、旨味を感じやすくなります。
コンテストに出品される日本酒の大半が『大吟醸』なのもわかりますね。
けど、ここは賛否。
だって、削った部分もお米です。
削った一粒も、削らない一粒も、どちらも等しくお米なんです。
雑味や複雑さのある日本酒を好む人もいますし、素直に磨かれてクリアーな日本酒を好む人もいる。
贅沢な味わいって疲れます。
まいにち懐石料理を食べる生活には憧れません。
海原雄山の生活よりも山岡さんの生活のほうが楽しそうじゃないですか。
ジャンクフードや手軽な料理。そういったものが日々の心に効くんですよね。
磨いたから良いということにならないのも、日本酒のおもしろいところだと思います。
ここに注意!精米歩合はこう読み取るべしっ
酒米をどれだけ削ったかを表す精米歩合ですが、実は見方がちょっとだけ特殊です。
例えば、
精米歩合70%の場合。
普通はこう思いませんか?
「うっわ、贅沢。半分以上削ってるじゃん」
このように、酒米を70%も削った日本酒だと思いませんでしたか?
私だけだったらすみません……(汗)
ただこれ、逆なんです。
正解は、酒米を70%残した日本酒。
つまり、精米したのは表面の30%のみということになります。
精米歩合40%の場合も同じです。
40%削ったのではなく、40%残した日本酒。
つまり、精米したのは表面の60%となり、半分以上精米したことになります。
精米歩合は、『本醸造』『吟醸酒』『大吟醸』などのランク分けの要因にもなるので、覚えておいて損はありません。
精米歩合50%の大吟醸もあれば、精米歩合23%の大吟醸もあります。
大外の味わいを決定づけるものなのに、同じ精米歩合でも味わいが全然違ったりと、知れば知るほど奥が深いところですよ。
実例:精米歩合70%『まんさくの花 美郷錦70』
酒米の解説については【酒米編】でお送りしますが、こちらのまんさくの花の精米歩合は70%。
美郷錦という酒米を30%だけ磨いた日本酒となります。
磨かないことで抑えられるコストと、酒米のエリート「美郷錦」がうまく融合した1本です。
価格は720mlで1350円(税込み)。
ブランド力が強くて、かつ酒米の表記もしっかりとしている。
そういった商品で税込み1500円を切る地酒というのはなかなかありません。
あってもオススメはしづらい商品……というのがレビューする側の本音です。
味わいには芯があり、イチゴのような強い香味が感じられます。
磨かないことで実現した香りと味わいの『厚み』。
コストを抑えてもこんなに鮮やかな香味を生めるんだ、というお手本のような日本酒です。
実例:精米歩合60%『山内杜氏 特別本醸造』
こちらは先ほどのまんさくの花よりも10%多く精米したものになります。
社名を大納川に変える前、まだ備前酒造だったころの定番酒。
地元で昔から親しまれている日本酒として知られ、その味わいも古き良きものとなっています。
私の感想をそのまま引用すると、
すごく素直な辛口っ!
15度とは思えないアルコール感と厚みがあります。
そして、その厚みと強さが香りに乗る~。
矛盾しているような気もしますが、穏やかにツンと鼻をさします。
ちょっと雑味を残すまろやかさは、本醸造ならでは。
気取らない晩酌ってこうだよなぁ。
なんだか、伝統を飲んだ気がしました。
やっぱり当時の私の感想にも「気取らない晩酌」というような、海原雄山を遠ざけるような言葉が出てきますね。
そして、雑味という言葉も。
クリアーや透明感という言葉は出てこず、フルーティーさを強調する感想もありません。
「昔ながらの製法」と「磨きすぎないこと」が相まって、若い人向けではない日本酒でした。
実例:精米歩合60%『阿櫻 純米吟醸 無濾過原酒 AKITA雪国酵母UT-1 ゆきのふスペシャル』
「阿櫻 純米吟醸 無濾過原酒 AKITA雪国酵母UT-1 ゆきのふスペシャル」
ちょっと先に私の感想から言っちゃいますね。
香りは漂うほどに華やか。
甘みには透明感があって、舌でべたつくこともありません。
香りのふくらみと広がりが見事なものです。
同じ精米歩合なのに、先ほどの「山内杜氏」とはまったく違った感想ですね!
華やか。透明感なんて言葉が出てきています。
「なんでこんなに感想が違うの?舌バカなの?」
そんな風に思われたかもしれませんが、そうなのかもしれません……。
いや、ちょっと待って。
少しだけ説明させて……させてよ……
ここが日本酒のおもしろいところで、精米歩合で決まるのは大外の味わいに過ぎないんです。
たしかに磨けば酒米のうまみが引き出せます。
けど、日本酒の味わいってそれだけじゃありません。
酵母、使用した酒米、仕込み水、醸造のしかた。どれもが複雑に絡み合って、個性となっているんです。
だから、これほどまでに感想が違う。
けっして馬鹿舌を認めたくないではありません。
今回の阿櫻でいえば、酵母が特殊。さらに酒米も珍しいものを使用しています。
その上、濾過もしておらず、しかも原酒。
さまざまな要因が混ざり合うことで、精米歩合だけでは測れない味わいを生んでいます。
実例:精米歩合50%『春霞 栗ラベル白』
今度は精米歩合50%。半分削った世界。大吟醸と呼ばれる日本酒の世界に入門していきましょう。
『春霞 栗ラベル白』
毎年、12月に発売されるNEXT5のひとつ、『栗林酒造』の1本です。
こちらざっくり私の感想です。
香りはさわやかさがあって甘いです。
そこに少しの酸が加わって、グラスの外まで香りを運びます。
味わいはじんわり甘口で、キレていくことなく余韻も甘めです。
口のなかでジューシーさが膨らむので、少しボリュームを感じますね。
凛とした透明感があってうまいです。
50%精米ともなるとやはり『透明感』という言葉が出てきます。
雑味を感じないため、水のような違和感のなさを感じるようになります。
甘い香り、酸、キレの有無、余韻、ふくらみ。
さまざまな味わいを素直に感じ取れるのも、雑味がないからこそですね。
実例:精米歩合35%『雪の茅舎 大吟醸 花朝月夕』
ついに精米歩合35%の世界。65%も削った世界への入門です。
ということは、精米歩合1%~50%はすべて大吟醸。同じランクの日本酒ということになります。
ここからはもう職人の世界。
どこまで突き詰めるか。
逆に突き詰めず、他のところで勝負するのか。
何を重要視するのかが醸造元ごとに違っておもしろい世界です。
まずは『雪の茅舎 花朝月夕』の感想を見てみましょう。
やわらかい。
やわらかいという文字と同じくらいやわらかいです。
その飲み口から、酒米が磨き抜かれているのがわかります。
+4度の辛口でありながら、舌にはとろりとした甘み。
そこからしっかりと辛口が顔を出し、凛としたのどごしで喉をとおり、品のある余韻を残す。
なんだか絶賛してますね。
このくらいの精米歩合になってくると、雑なものは一切ありません。うまみダイレクト。
加水したお酒ならそのバランスの驚かされるし、花朝月夕のような無加水の日本酒であれば「とろりとした」なんて表現も出てきます。
ただ、感想には続きがあるんです。
最終的には、『うまいけど年に一度飲めればいいかな!』という印象に落ちつきました。
ちょっと味わいが贅沢すぎるかな。
自分用ではなく、あくまで贈答用として。
ハレの日にこそふさわしい一本でした。
年に一度飲めればいい。
これこそが『花朝月夕』への感想の肝となります。
『うまい』と『毎日飲みたい』はイコールではありません。
磨き抜いた贅沢な味わいは日常には強すぎました。
番外編:『太平山 天巧50・40・20』飲み比べ
ずいぶん前ですが、潟上市の小玉醸造さんにて天巧3種を飲み比べさせていただいた感想がありますので、そちらも載せておきますね。
※天巧のうしろの数字が精米歩合です。
天巧50……酸味が強めに感じられて、少しどっしりとしてる。
天巧40……フルーティーでやわらかくて最強の秋田酒。
天巧20……舌が「これは水が」と錯覚して、ほんの一瞬だけ無味の時間があった。そこからすぐに味が開いて、ぶわっと果実感が広がる。甘みが心地よくていつまでも飲んでいたい。うまい。うまい。うんまーーーい!
当時の私のテンションは置いておいて、驚きはここです。
“「これは水だ」と錯覚して”
精米歩合20%までいくとコストも味も異次元。
価格は720mlで10000円を超しますし、味も水に近づいていきます。
タイトルから逸れてしまうので書きづらいですが、山口県の獺祭。その二割三分も、水のように感じるほど遮るものがない味わいでした。
まとめ:結局は好み。精米歩合はあくまでひとつの目安に過ぎません
今回は、秋田の地酒で学ぶシリーズとして【精米歩合編】をお送りしてみました。
70%のまんさくの花を絶賛していたり、同じ60%でも感想がまるで違ったり、35%の雪の茅舎を「年に一度でいい」と言ってみたりさまざまでしたね。
ざっくりまとめるとこのようになります。
- 精米歩合のあとに続く数字は、削った数値ではなく残した数値(精米歩合70%の場合は30%を削ったということ)
- 削る理由は、酒米の中心にいくほどうまみがあるから
- 削れば削るほど雑味はなくなり、透明感がうまれる
- ただ、削ったところもまた米であり、雑味もまた米のうまみ
- 精米歩合だけで味は決まらない
- おおよその好みを決めるための一因として覚えるに留めるべし
むかし、いわゆるチェーンの居酒屋やカラオケにある『日本酒』としか書かれていない日本酒。
あれを飲んで、「日本酒はマズイもの」と誤解していた時期があります。
どうしてもあの時のイメージが強くて、いまでも低精白のものは避けてしまいます。
けど、そんな私でも『まんさくの花 美郷錦70』はうまいと感じました。
トラウマを壊してくれたんです。
大切なのは『いいお酒』『わるいお酒』ではなく、『うまいかどうか』。
たまたま合わない日本酒に出会っただけで疎遠になるなんて、もったいない時期を過ごしました。
磨かない日本酒が苦手なら磨いた日本酒を探せばいいんです。
甘い日本酒が苦手なら辛い日本酒を探せばいいんです。
そうして好みがわかってきたら、そのジャンルのなかを探せばいいだけなんですから。
あなたにとっての最高の一本はかならず存在します。
そのお酒が秋田の地酒だったらうれしいのですが、それ以上に“あなたの地元のお酒”であればもっとうれしいです。
地元に目を向ける人が増えれば、地方はもっと賑わいます。
力をもたない広報も、たくさんいれば影響力が生まれます。
もっと地元を元気に。
共感してくれる方が増えるきっかけになってくれると、この記事にも意味があるのではないかと思えます。
次回は、近日中に【日本酒度編】をあげる予定です。
知ればもっと楽しくなる世界を、私といっしょに楽しみませんか?
※【日本酒度編】できました。
※【酸度編】はこちら
それでは今回はこの辺で。
さるあみでした。