あきたさけ!

秋田に生まれて36年。秋田市のカフェ、地酒、お得な情報をお届けします。

【刈穂 山廃純米酒 ひやおろし】の評価・レビュー:刈穂らしく、山廃らしく。

刈穂 山廃純米酒 ひやおろし 評価・レビュー

こんばんは、さるあみです。

 

秋が深まってくると、日本酒のラベルは紅葉をイメージしたものが多くなってきますよね。

赤や黄色。

深みをもたせた色使いで季節を表現してきます。

さて、そんな秋酒のなかでも異彩を放っているのが今回の1本。

 

『刈穂 山廃純米酒 ひやおろし

 

です。

なにせ真っ黒。

“静かに、しかし真っ向勝負”といった印象を受ける1本です。

 

そして、さらにおもしろいところが『背景の少なさ』にあります。

この1本、情報がほとんどありません。

書きたくても、書くことがないんです。

それでも絞り出して、ちょっと見ていきましょう。

 

 

『刈穂 山廃純米酒 ひやおろし』は、ストーリーが見えない1本

たとえば爛漫の『萌稲』であれば、

 

“地域農業の活性化のため、はじめて自社の田んぼを用意した酒”

 

という背景があります。

大納川であれば、“心を酔わす酒を目指した酒づくり”という背景を、蔵人の言葉がラベリングされています。

なので、ストーリーが見えるんです。

ストーリーを知れば、興味が湧きます。

手に取らせるのはどんな酒にもできることですが、レジに持っていくとなれば一押しが必要。

ストーリーは、そのきっかけになるものです。

 

が、この『刈穂 山廃純米酒 ひやおろし』にはストーリーがありません。

書いてあるのは情報のみ。

数値で表せるものが中心です。

なので、生まれるまでの背景が見えません。

ですが、これだけは言えます。

 

『刈穂』です。

 

『刈穂』というだけで十分。

たったそれだけで、買う理由になり得ます。

 

なぜなら、あの『六舟』を生んだ酒造だからです。

 

どこでも見かける、どこでもうまい酒。

吟醸酒 六舟』

その酒造だというだけで、少なくとも私は信頼してしまいます。

 

さて、連面と続く『刈穂』のブランド力に触れたところで、この1本がもつ特徴にも触れてしまいましょう。

 

『刈穂 山廃純米酒 ひやおろし』は、美山錦を60%までみがいた山廃仕込み純米酒です。

上槽後、すぐに火入れがされています。

このお酒のポイントは2つ。

 

 

山廃仕込みの『山廃』とは『山卸し廃止』の略称で、酒づくりの工程のひとつを指します。

『山卸し』で使うのは、身の丈よりもながーーーーーい木の棒。

 

名を、櫂棒(かいぼう)。

 

タンクのなかをかき混ぜるための棒なのですが、山卸しでは桶にいれたお米をすりつぶすのに使います。

 

ちょっと想像してみてください。

身長よりも高さのある棒で、桶にいれたお米をすりつぶす姿を。

『すり鉢』と『すりこぎ』でおはぎをつくるのとは訳がちがいます。

なにせ扱いづらい。

そしてなにより、重いんです。

 

櫂棒自体もですが、お米もまた『量』で重いんです。

 

そんな工程を3分間。5セット行います。

櫂棒を持ったことのある人間からすれば、正気とは思えません。

山卸しが重労働と言われているのにも頷けます。

 

とはいえ、『山廃仕込み』はそんな『山卸し』を『廃止』したものです。

工程自体がありません。

『すりつぶす』のではなく『麹で溶かす』ことで、『廃止』を可能としました。

 

と、ここまでは『山卸し』についてお伝えしてきました。

ですが、大切なのはそこではありません。

山廃仕込みが、“伝統的な造り方”であることこそがいちばんのポイントになります。

 

というのも山廃仕込みって、いわゆる『生酛造り』のなかの言葉。

生酛造りのなかで山卸しを行うか否かのお話なんです。

なので、大切なのは『生酛造り』であるところ。

そしてそれは、

 

  • 使うのは自然のなかにある乳酸菌
  • 現代の日本酒造りよりも時間がかかる
  • 味わいは酸味のしっかりしたものになりやすい

 

という特徴をもちます。

なので、『山廃』や『生酛』という単語を見かけたらこんなふうに推測してみてください。

 

「手間と時間がかかってて、酸味が強めなんだろな」と。

 

そしてもうひとつのポイント『上槽後、即火入れ』。

 

この「上槽ってなんぞ?」と思いませんでしたか?

上槽とは、『搾り』の別名。

できあがったもろみを生酒と酒粕に分ける作業のことをいいます。

なので、『上槽後、即火入れ』とは、『しぼってからすぐに火入れをした』という意味になるんです。

 

日本酒のなかには、ラベルに上槽年月を書いてあるものもあります。

「しぼってから結構寝かせたんだな~」といった感じで、読み解くのもおもしろいですよ。

 

と、長々とうんちくを垂れ流してしまったところで、いよいよ飽きてきちゃいましたよね。

いい加減、飲んでみた感想にいきましょう。

 

飲んでみて:メロン感のなかにジリジリとした酸味~

もうね、刈穂ぉぉぉっ!って感じです(雑)

 

おなじ刈穂の純米酒『宝風』を思わせるメロン感。

それがありながらも、舌には酸味がジリつきます。

 

甘口辛口でいえば、やや辛口でしょうか?

甘みなく伸びやか。

うまみがベタつきません。

舌ざわりがスッキリしているせいか、柔らかいわけではないのにスイスイいけちゃいます。

 

ふわっとした余韻に至るまでがスムーズなので、変わっている味わいが心地よい1本です。

ぜひ、季節の味覚といっしょに……

と言いたいところですが、私は肴なしで飲みきってしまいました。

 

酸味とコク。

単体でおいしかったです!

 

『刈穂 山廃純米酒 ひやおろし』の商品情報

  • 使用米:美山錦
  • 精米歩合:60%
  • アルコール度:16度
  • 日本酒度:+2
  • 酸度:1.8
  • 発売時期:9月上旬

 

まとめ:秋深まる前に飲みたい、冷やしておいしいひやおろし

夏には市場で見当たらなかった『山廃』が台頭してきましたね。

味わいのトレンドが変わってきたのをひしひしと感じています。

今回の1本。

 

寒くなってきたのでぜひ熱燗で……

 

とも思いましたが、オススメはまだ常温以下。

冷やして飲むと、より刈穂らしさが堪能できます。

ぜひ、秋が深まりきる前に。

あなたも飲んでみてはいかがでしょうか?

 

それでは、今回はこのへんで。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

 

※日本酒選びに迷ったらこちらもどうぞ

 

www.saruami-sake.work