こんばんは、さるあみです。
福小町の蔵といえば知っている方も多い湯沢市の木村酒造ですが、実はもうひとつ大きなブランドがあることを知ってましたか?
その名も『角右衛門』。
大きな酒屋さんでは頻繁に目にする名前なので、気になっていた方も多いはずです。
ただ、名前だけだと福小町の蔵元のものだとは想像できないですよね。
たぶん、蔵元である木村酒造さんも同じことを考えたのだと思います。
だから角右衛門の裏ラベルにはこう書いているんです。
福小町醸造元、と。
「なんで福小町の文字だけデカイねん」と思うかもしれませんが、実際にボトルを見てみてください。ほんとにこんな感じ!
そんな、まるで知る人ぞ知る銘柄のようになってしまっている角右衛門ですが、実は味もバリエーションも福小町に引けを取りません。
季節ごとに商品がありますし、そのどれもが高い質をもって提供されています。
というわけで今回は、木村酒造の角右衛門をご紹介します!
それも、冬期限定で醸される1本。
“角右衛門 無圧上槽 中汲み”
この記事を読むことで、冬期に楽しみたい日本酒が1本増えて、今年の冬が楽しくなります。
読み終えるころには、木村酒造を“福小町醸造元”ではなく、角右衛門醸造元として意識するようになるに違いありません。
それではいってみましょう。
最後までゆっくりしていってくださいね。
- 木村酒造『角右衛門 無圧上槽 中汲み』の味と評価は?
- 『角右衛門 無圧上槽 中汲み』をラベルから見てみよう
- 『無圧上槽』『中汲み』ってなに?
- まとめ:『角右衛門 無圧上槽 中汲み』は、ストレスをかけずにしぼってバランスのいい部分だけを汲み上げた日本酒
木村酒造『角右衛門 無圧上槽 中汲み』の味と評価は?
ラベルから読み取れるものは後回しにして、まずは味からいっちゃいましょう。
一言でいえば、
“冬の空気によく合うお酒です”
どういうことかというと、冷やして飲んだときの冷たさとやわらかさのバランスが抜群なんです!
冷やすことでキリッとした辛さを感じるお酒って夏向きです。
暑いからこそ心地よく感じる、キンキンの辛さ。
けどこれって、冬だとちょっと物足りない。
冬場に求める味わいって、ちょっと伸びやかな、残る味わいだと思いませんか?
なぜなら、喉が渇いていないから。
強いのどごしはそこまで求めていないのではないでしょうか。
だからこそ。だからこそ、無圧がいい。
やわらかくてクリアーで甘くて、やわらかい。
香りは文句なくふっくら!
圧をかけずに絞っているから、硬さがなくてまろやかです。とろ~っと入ってきます!
味の後半に変化はなく、クリアーな甘みが最後までつづきます。
酸度が低いお酒って飲みやすいですよね。
すーいすいっと飲めてしまう!
日本酒度だけで見れば+3度の辛口。
ですが、無圧のやわらかさと酸度の低さがそれを感じさせません。
もしかしたらですが、辛口好きの方は甘さを強く感じやすいかも。
特に、ど辛を好むくらいの辛口好きには甘い。間違いなく甘いです。
ただ代わりに、これから日本酒を始めたい方にはおすすめします!
ばっちりの日本酒です。
『角右衛門 無圧上槽 中汲み』をラベルから見てみよう
まずは原材料ですが、大抵の日本酒は『国産』の米を使用していますので、『国産でなかったとき』だけ注目してください。
使用米は、秋田ではおなじみの美山錦。
美山錦って、寒さに強いんです。だから寒冷地で好まれていて、東北では馴染みのある酒米です。
米どころの密集地『東北』で好まれているということは、生産量もやはりそれなり。
山田錦、五百万石に次いでの第三位となっています。
使用酵母は、協会1801号。
生まれたのは平成18年と日は浅く、まだまだ若い酵母です。
酵母としての評判はすこぶる良く、賞を受賞した日本酒のなかにも続々と使用されています。
生産量三位の『美山錦』と賞常連の『協会1801号』。
それだけでも涎が出ますよね(笑)
アルコール分は16.5度と平均的。
精米歩合は55%。原材料が米だけなので『純米吟醸』に分類されます。
日本酒度は+3。
+1が中間。中口にあたり、マイナスにいくほど甘くなり、プラスにいくほど辛くなるとされています。
- 酸度
- アルコール度数
- 汲んだ部分
- しぼりかた
このあたりの組み合わせで感じ方は大きく変わってきますので、+3程度なら中口の誤差くらいに考えてもいいかもしれません。
実際、私が飲んで感じた印象は『甘口』でした。
ということで、次の項では『甘口』に感じた要因について自分なりの見解を書いてみようと思います。
『無圧上槽』『中汲み』ってなに?
『無圧』というのは“しぼりかた”を指します。
ふつう、日本酒のもとである“もろみ”をしぼるときは、圧力をかけてしぼります。
機械で圧力をかけて短時間でしぼるか。
もしくは“もろみ”を入れた酒袋を重ねて、袋の重みでじっくりとしぼるかの違いはありますが、どちらも圧力をかける方法です。
『無圧』というのは文字通り『圧が無い』わけです。
もろみを入れた酒袋を吊るして、あとはもろみの自重と重力にまかせる。
これが圧力をかけずにしぼる方法となります。
例えが悪いですが、濡れた雑巾をイメージしてください。
自分で圧力をかけてしぼったほうがすぐに水気が切れますよね。雑巾からしたたる水を、垂れなくなるまで黙って待つ人はいないはずです。
つまり、『無圧』という方法はとても時間がかかります。
それでも『無圧』という方法があるのは、酒にストレスを与えずにしぼれるから。
酒本来の香りやうまみを取り出すにはうってつけの方法なんです。
そして『中汲み』。
こちらはいわば“出てきたタイミング”を指します。
“もろみ”をしぼって最初に出てくるお酒を『荒ばしり』。
最後に圧力をかけてしぼり出すお酒を『責め』。
そして、『荒走り』と『責め』の間に出てくるのが『中汲み』です。
もしかしたら『中取り』のほうが一般的かもしれません。
『荒ばしり』は、名前のとおり荒々しい味わいと言われていますが、実際は香味がつよくてフレッシュさがあります。
新酒の時期なんかにはよく目にするかと思いますので、冬の日本酒売り場を要チェック!!
『責め』は、単体だとなかなかお目にかかれない……かな。
最後に圧力をかけてしぼり出すことから、『しぼりカス』みたいな印象をもった方もいるかもしれません。
スイカの皮スレスレの部分とかを想像してもらえれば、それは誤解です。
実際は、濃厚さを感じるおいしいお酒です。
『中汲み』はいいとこ取り。
バランスに優れていて、鑑評会に出される日本酒には『中汲み』が多かったりします。
ちなみに、『荒ばしり』『中汲み』『責め』単体だとほぼラベルに表記されます。名前の一部にされます。
つまり、これらの記載がない日本酒は、ほとんどが『荒ばしり』『中汲み』『責め』をブレンドしたものということになります。
まとめ:『角右衛門 無圧上槽 中汲み』は、ストレスをかけずにしぼってバランスのいい部分だけを汲み上げた日本酒
ここまでですごく手間がかかっている上に、厳選されたお酒だということがわかりました。
ただ、日本酒のすごいところって、ここだと思うんです。
“いいお酒を全員がうまいと感じるかはわからない”
私自身、感想のなかで「やわらかい」という言葉を複数回つかっていますが、これはポジティブな感想として重ねています。
ですが、『甘い』という部分について。
ここに関しては、辛口好きには好まれないだろうと思って重ねました。
だからおもしろい。
だから日本酒って楽しいんです。
だって、私の“おいしい”は誰かの“まずい”かもしれない。
逆に、誰かの“おいしい”が私にとっては“まずい”かもしれない。
これだから勧めがいがあるし、個人の感想がおもしろいんですよね。
メーカー発表の味わいを、そのまま感じ取る人がどれだけいるか。
違っていいじゃないですか。
甘口を辛いと言おうが、辛口を甘いと言おうが、楽しんだもん勝ちです。
うまいと感じたお酒が1番うまいんです。
あなたの1番好きな日本酒はなんですか?
それでは、今回はこの辺で失礼します。
さるあみでした。