「甘いとか辛いじゃなくて、おいしい秋田の日本酒が欲しい」
「“いま”買いにいける秋田の日本酒が知りたい」
この記事は、そんなあなたに向けて書いています。
はじめまして。
スーパーで酒担当者をしてきた経験を活かし、秋田の地酒を発信しているさるあみと申します。
スーパーではさまざまな秋田の地酒に触れ、それはそのまま飲む機会へと繋がっていきました。
ですので、飲んだ本数は250を数えます。
秋田県は、地元の人間からみても田舎です。
車がないと不便ですし、遊びにいくところと言われてもパッと答えることはできません。
テレビに映る東京の景色がいつも眩しくて、羨ましいと感じながら育ちました。
ですが、羨んだのは子どもの頃。
大人になれば見えてくるものがあります。
米、水、野菜。
美しい食が、あったんです。
特にお米は、他県に負けない実りがあります。
食べるためのお米。
そして、飲むためのお米。
秋田県は、形を変えてお米を楽しむことに特化しているのではないかと思います。
たとえば、“日本酒”が最たる例です。
おいしい湧水と米。
そして、寒冷な気候。
日本酒造りに適した土地なので、酒蔵の数は35を数えます。
今では『新政』を筆頭に、県外にも進出。
『新政』は、秋田にいても買うことの難しい、時代が選んだ希少な酒となりました。
ということで今回は、筆者が飲んだ250本の中から“ただおいしかった秋田の地酒”を12本紹介します。
なかなか買えないものを除き、通年販売のものでまとめました。
好みの偏りも減らしたつもりです。
ただただ、「あれ、おいしかったなあ」とよだれの出るものを選んでいます。
今回紹介する1本から、それをつくった酒造にまで興味をもっていただけるとすごくうれしいです。
ぜひ、あなたの日本酒選びの参考にしてみてくださいね。
どうやって選んだの?
改めて、筆者がこれまでに飲んできた秋田の地酒は、インスタグラムへの投稿で233。
感想を残していないもの、写真が撮れなかったものなどを含めると約250銘柄となります。
そのなかから単純においしかったものをピックアップ。
さらに、ピックアップしたものの中から、
- おなじ酒造のものは1本に
- 通年商品を中心に
- 手に入りやすいものを中心に
という条件で12本まで絞りました。
250本から選ぶ秋田の地酒12選
どれも蔵の地力がみえる1本です。
「毎日飲むならこういうのでいいんだよ」
と唸るものをそろえたので、その1本が家にある景色を想像しながら読み進めてくださいね。
1、旨辛口純米酒 うまからまんさく(日の丸醸造)
日の丸醸造は、横手市にある酒造で『まんさくの花』が有名です。
うまからまんさくの特徴は、なんといっても『うまからさ』。
+8度の大辛口でありながらも、たっぷりのうまみが感じられます。
さらにもうひとつ。
この情報こそが、『うまからまんさく』の価値を語る上でかかせないものとなります。
実は、『うまからまんさく』は、日の丸醸造の蔵人がもっとも愛飲している1本。
もっとも普段の晩酌で飲まれているお酒なんです。
私も飲んでみて思いました。
「このお酒が常に家にあったら幸せだろうな」と。
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2、山本 ピュアブラック(山本酒造)
ピュアブラックをつくる山本合名は、秋田県でも指折りのおもしろ酒造です。
まず、発想が奇抜。
など、とにかく話題にことを欠きません。
そんな山本酒造のなかでも、『ピュアブラック』は正統派。
グレープフルーツのような酸と苦みをもってスパッと切れる1本です。
すごい蔵なんですよ。山本って。
ここまでの道のりを考えると、とても素通りなんてできません。
奇抜を手にとる前に、まずは正統派から攻めてみてはいかがでしょうか。
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3、奥清水 純米酒(高橋酒造店)
※こちらを覗いているのは美郷町の形をしたここだけのマスコット、『みさとちゃん』です。
『奥清水 純米酒』をつくる高橋酒造店は、美郷町六郷にあります。
六郷といえば、湧水の里。
六郷湧水群が有名です。
そんな地区でつくられるだけあって、『奥清水 純米酒』は水の良さが感じられる1本。
「ああ~、こういうのでいいんだよ、こういうので」
と、おもわず唸ります。
いうなれば曲者。
感動するほどおいしいわけではないのに、なぜかハートがつかまれる。
気がつけばまた飲みたいと思っている魔性の地酒です。
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4、ゆきの美人 純米酒(秋田醸造)
マンションの1Fが酒蔵という特殊な佇まいは、訪問者が一度は素通りしてしまうほど異質。
「え、ほんとにここでいいの?」
と思ってしまうほど、あなたが想像する酒蔵のイメージとはかけ離れています。
さて、そんな秋田醸造のゆきの美人なのですが、純米酒は実は2種類あるんです。
『純米酒』と『完全発酵』。
『純米酒』は、辛さを抑えた若々しい1本。
『完全発酵』は、辛さを引きだした芯の通った1本。
どちらも違ってどちらも良いのですが、今回推したいのは『純米酒』のほうです。
トロピカルなフルーティーさではなく、コクのあるフルーティーさをもち、ガス感で鮮やかに飲ませます。
『ゆきの美人』を知るならまずはここから、ぜひどうぞ。
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5、やまとしずく 山廃純米酒(秋田清酒)
主な銘柄には『刈穂』『出羽鶴』があり、そちらを目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
では『やまとしずく』はというと、ちょっと特殊。
契約販売店のみの販売となります。
とはいえ、契約販売店といっても取り扱い店は豊富です。
県内の地酒屋さんはもちろん、最近では通販で取り扱うお店も増えてきています。
さて、そんな『やまとしずく』の『山廃純米酒』なのですが、味わいは深くてジューシー。
ラベル上では辛口ですが、広がる甘みが心地良い1本となっています。
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6、小番 本醸造(佐藤酒造店)
佐藤酒造店といわれるとピンとこない方も、こういわれたらどうでしょうか。
『出羽の冨士』の蔵元。
かつては『出羽の冨士 精撰』が主力商品で、販売数量の95%を占めていました。
ですが今、佐藤酒造店は大きく変わってきています。
さまざまな新商品を生み出し、女性の活躍も目立つにぎやかな酒造に。
そんな佐藤酒造店のなかで、『小番 本醸造』はちょっと特殊な1本です。
理由は3つあります。
杜氏の苗字をつかった『小番(こつがい)』という名称。
杜氏の名を冠するということは、自信の現れにちがいありません。
だからできる低価格。
さらに、販売は秋田駅前にある『菅久商店』さんのみです。(ネット掲載NGだったらごめんなさい)
秋田市の玄関口にある地酒屋さんが、レジ奥の目線の高さに陳列している。
この事実が、『小番 本醸造』のうまさを証明しています。
以上の3点から強くおすすめしたい1本なのですが、先にお伝えしたとおり、扱いは菅久商店さんのみ。
秋田駅前にいらしたときにでも、本記事を思い出していただけるとうれしいです。
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7、一白水成 純米吟醸(福禄寿酒造)
主なブランドは、県外向けの『一白水成』と、県内向けの『十五代彦兵衛』の2枚看板。
なかでも『一白水成』は、全国的にも高い評価をもつブランドです。
そんな『一白水成』の『純米吟醸』ですが、実は、2021年に入るまで720mlという規格がありませんでした。
だから、この1本は定番品にして新商品。
「このサイズを待っていた!」
という方も多いのではないでしょうか。
肝心な味わいはというと、まさにお手本。
「うまい純米吟醸ってこうだよな~」と思わせる、うまみ豊かな1本です。
そして申し訳ありません!
720mlは通販サイトでの取り扱いがありませんでした。
お近くの地酒屋さんをご利用ください。
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8、チトセザカリ純米吟醸:桃色(千歳盛酒造)
『チトセザカリ純米吟醸:桃色』をつくる千歳盛酒造は、鹿角市にあります。
「桃色ということは他の色もあるよね」と思われたあなた。
そのとおりです。
実は、チトセザカリシリーズは『酒米×酵母』の組み合わせで色分けされています。
『水色』は、秋田酒こまち×1401号酵母。
『絹色』は、秋田酒こまち×AKITA雪国酵母。
そして『桃色』は、美郷錦×秋田美桜酵母です。
『桃色』はチトセザカリシリーズの1作目であり、香りの美しい1本。
もし、ワイングラスをお持ちでしたら、ぜひワイングラスで楽しんでいただきたい地酒です。
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9、福小町 特別純米酒(木村酒造)
湯沢駅からほど近いところにあり、観光がてら徒歩でいけるのも魅力のひとつとなっています。
主力商品は、『福小町』と『角右衛門』。
『角右衛門』は小仕込みの契約販売で、『福小町』は全国展開のブランドとなります。
ちなみに、
ではなく、なぜ『特別純米酒』なのか。
それは本当に、ただ単に、おいしいからです。
はじめて居酒屋で飲んだときは、日本酒が得意ではない友人と驚きを共有しました。
あれから何年経てど、忘れることはありません。
友人に「これ、おいしいですね」といわせてくれたこと。
それが何よりうれしくて、感謝しかない1本です。
さて、そんな『福小町 特別純米酒』なのですが、実は秋田県内限定流通。
……だと思ったのですが、楽天でみつけてしまいました。
ショップ名は『秋田県物産振興会』
こちらは確か、アトリオン地下のおみやげ屋さんだったかと思います。
「どこにいても買えてしまうのか……」
と、少し悲しい気持ちになりましたが、勝るのはもちろんうれしさです。
県内の方はもちろん、県外の方にも知っていただきたい『福小町 特別純米酒』。
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。
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10、天の戸 醇辛(浅舞酒造)
主力商品は『天の戸』、そして『夏田冬蔵』
『夏田冬蔵』は米ちがいの純米大吟醸シリーズで、小さく仕込まれています。
逆に、『天の戸』は大きく。
スーパーやコンビニでも見かけるおなじみのブランドとなっています。
そんな『天の戸』でなぜ『醇辛』なのか。
それは、盲点だったからです。
まさに埋もれていた1本だったからなんです。
なぜなら、『醇辛』のとなりにはかならず『美稲』と『吟泉』があったから。
『美稲』は、食中酒の定番として名が挙がります。
『吟泉』はコスパ。
1000円で買える純米酒でありながら、飲み方は自由が利き、さらには『天の戸』のブランド力も手伝って売り上げを伸ばしています。
だからこそ、隠れていたんです。
『醇辛』
+10度の辛口が。
たやすく手に入り、しっかり辛くて、しっかりうまい。
灯台の下は暗いのだ、と暗に告げている1本です。
普段づかいに、ぜひどうぞ。
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11、美酒の設計 純米吟醸 火入れ(齋彌酒造店)
『美酒の設計』をつくる齋彌酒造店は、秋田県由利本荘市にある酒造です。
主力商品は『雪の茅舎』、そして『美酒の設計』
『雪の茅舎』はスーパーやコンビニでも買えますが、『美酒の設計』は特約店のみの取り扱いとなっています。
そのあたりは本当に徹底されていて、蔵元直営のカフェショップ『田屋』にも取り扱いがありません。
さて、そんな『美酒の設計』なのですが、『火入れ』と『生酒』がそれぞれ年に1回出荷されます。
今回は、保存がしやすい『火入れ』のほうを選ばせていただきました。
『美酒の設計』の造りは、特殊にして原点。
「酒は人でなく、微生物がつくる」という考えに基づいてつくられています。
そのため、人の手は最小限。
ですが、酒質は暴れることなく、しっかりとまとまっています。
この濃さとスムーズさの両立は「お見事!」の一言です。
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12、春霞 純米酒 赤ラベル(栗林酒造店)
『春霞』をつくる栗林酒造店は、秋田県美郷町にある酒造です。
蔵の酒の6割以上に『美郷錦』をつかっており、その扱いは県内でもピカイチ。
蔵の敷地内にある地下水でつくられた酒はやわらかく、『春霞』という名称にぴったりの酒質を誇っています。
さて、そんな『春霞』なのですが、『赤』があるなら他の色もあります。
- 緑
- 白
- ピンク
- 花
- 田んぼ
- 湧き水
とにもかくにも、たくさんあります。
では、なぜ『赤ラベル』なのか。
それは本当に、単純に、おいしいからです。
『ピンク』は秋田県内限定流通。
『白』『花』『田んぼ』『湧き水』は季節限定なので外したという事情も確かにあります。
ですが、通年。
通年販売の純米吟醸『緑』と比べると、『赤』が勝ります。
『美郷錦の華やかさを、静かに、激しすぎずに堪能できる。飲み飽きしない』
そんな、日々の晩酌に似合う1本。
それが『赤ラベル』です。
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250本から選ぶ秋田の日本酒12選のなかでもイチオシがこれだ!
ズバリ、
『奥清水 純米酒』です。
筆者の出会いは、秋田駅前の個人で営まれている居酒屋さんでした。
そこのマスターが勧めてくれたのがきっかけです。
ただ、勧め方がおもしろかった。
「な~んも感動するような味じゃないんだ。ただなんか、『あ~、いま日本酒飲んでる~』と思わせてくれる。結局、こういうのでいいんだよね。『あーうまい!』とはならないけど、飲んでみる?」
「これ、勧めてるんだよね?」と、ちょっとした疑問を抱いて飲んだのがはじまりでした。
この『奥清水 純米酒』が、まあ曲者で。
確かに感動もない。
唸るほどうまくもない。
ただ、しっくりきたんです。
ハマった気がしたんです。
「これだ。これが家にあればいい」
『奥清水 純米酒』は、そんな風に思わせてくれたんです。
この『家に置いておきたい』という感覚。
これって、1度の感動に匹敵するものだと思います。
感動のない1本が、感動する1本に肉薄する。
この感動を、ぜひあなたにも感じてもらえたらなと思います。
【最新版】飲みやすい!うまい!秋田の日本酒12選:まとめ
いかがだったでしょうか。
ちょっとした制限を設けたため、かなりシンプルなラインナップになったのではないでしょうか。
とはいえ、やっぱりシンプルっておいしいですよね。
手を変え品を変えさまざまな新商品が出ますが、消えない定番品の地力を忘れることなどできません。
それは12本まで絞っているときに強く感じたことです。
そして、改めて思います。
やっぱり地元の日本酒っておいしいですね。
この気持ちは、他県の方もいっしょではないでしょうか。
だからこそ、いろんな人がいろんな日本酒を紹介して、地元の日本酒を盛り上げていけたらいいですよね。
まだまだ知られていない日本酒を、あなたの手に。
2022年も、その先も、伝えていければと思います。
ではでは、今回はこのへんで。
この記事があなたの日本酒選びに役立ってくれるとうれしいです。
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