「贈答用にしたいから、箱も立派な地酒がほしい」
「予算は5000円くらいがいい」
今回の記事は、そんなあなたに向けた記事なります。
こんばんは、さるあみです。
実は、『福小町』という銘柄には最初、まったく別の名が与えられていたって知っていましたか?
これがちょっとおもしろくて興味深いものなので、本題に入る前に少しだけお付き合いください。
『福小町』とは?
今でこそ女性的な響きのある『福小町』ですが、江戸のころはこのように呼ばれていました。
男山、と。
「いやチョット待って! 男山って他にもいっぱいあるけど?」
北海道に本家男山、新潟に根知男山、福島に開当男山、兵庫にも男山というように、さまざまな地で耳にする音ですよね。
なぜ、あちこちに男山という銘柄が存在するのでしょうか。
そこには、ある験担ぎのようなものがありました。
“男山=美酒の代名詞”
江戸時代、兵庫の『木綿屋山本本家』にて『男山』は生まれました。
同蔵が最盛期を迎えたころ、『男山』は八代将軍・吉宗のお膝酒に引き立てられたとされています。
そこから兵庫、灘の酒ブームが起こり、『男山』は“元服の祝い酒”とされるようになりました。
こうして、『男山=美酒』というイメージができあがり、多くの造り手がその名を冠した日本酒を造りあげます。
木村酒造も、その多くの造り手のひとつです。
明治14年、明治天皇が湯沢市を訪れた際、従侍長の宿泊先にあてられたのが木村酒造でした。
そこで振る舞われた日本酒が『男山』です。
その評価は意外なものでした。
『甘くて香味がやさしい。男山というよりは女性的である』
という称賛を受けたのです。
これにより『男山』は、男らしさではなく、女性らしさをもった『福娘』という名を賜ることになります。
そうして『福娘』はやがて、小野小町生誕の地であることにあやかり、『娘』を『小町』と改めいまに至ります。
『福小町』は、こうして生まれました。
『福小町 大吟醸』の味は?
『福小町 大吟醸』は、香りが段違いです。
そそいだ勢いで香りが押し上げられて、ふわっと鼻をくすぐります。
グラスのなかで落ちついてからも、その香りは健在。
鼻を近づける必要がないほど遠方まで香ります。
香味はまるでマスカット。
吟醸香にある女性らしさは、まさに当時の従侍長がおっしゃるとおりなのかもしれません。
口に含むとゆるやかな辛口で、バランスがいいです。
舌のどこに乗せてもうまい。
五味すべての感覚に喜びがあります。
恐ろしく完成された1本。
陶器ではなくグラスでいただきたい、五感すべてで楽しみたい逸品でした。
誰におすすめするかと問われれば、胸を張ってこう言います。
『だれにでも』
KuraMasterやIWC【インターナショナル・ワイン・チャレンジ】など、国外のコンテストにおいても優れた賞をおさめてきたのが福小町です。
海外の方にも認められ、やがては本当に言われるはずです。
“世界中の誰が飲んでもおいしいSAKE”と。
もちろん、コンテストで賞を獲ったという“格”などなくても、『福小町 大吟醸』は絶品です。
秋田に木村酒造あり。
もしかしたら、外堀(世界)を埋めてから内側(日本)を落とす稀有な例になるかもしれませんよ。
その前にぜひ、飲んでみてくださいね。
『福小町 大吟醸』の商品情報
飲み方は大吟醸らしく『冷やして』飲むのが一般的です。
ところが、木村酒造公式サイトによると『日向燗(30℃)』もいけるとのこと。
楽しみ方の幅広さもうれしい一本ですね。
『福小町』で他におすすめの商品は?
『福小町』はどの定番酒も質が高くて、だれにでもおすすめできます。
今回は、デザインは似ているけどまったく味の異なる二本をご紹介します。
予算に合わせて選択肢にいれてみてくださいね。
『福小町 特別純米酒(秋田県内限定販売)』
月並みな言い方になりますが、普通においしい純米酒です。
ここでいう普通とは、これ以上ない褒め言葉だと思ってください。
普段遣いにもってこいな日本酒にたいして、『普通にうまい』というのは大切なこと。
毎日飲みたいと思わせてくれる素敵な一本です。
『福小町 芳香辛口』
特別純米酒と同じく赤字のラベルでありながら、味わいは驚きの辛口。
日本酒度+8という数値は、辛口好きにもってこいです。
燗することで辛さがひきたち、スッキリとした味わいになりますよ。
好きな人にはたまらない一本です。
『福小町 大吟醸』の感想・評価:まとめ
『福小町 大吟醸』のうまさを語るには私の語彙が少なすぎて、もどかしさがあります。
桐箱から始まってすべてが美しく、ラベルのデザインは繊細。
味は香り高く鮮やか。
飲むものに強烈なインパクトを与えてくれます。
心から見事な一本です。
わびさびの詰まったこの一本。
お世話になったあの人に、いかがでしょうか?