こんばんは、さるあみです。
ふだんは秋田の地酒しか飲まないようにしているのですが、それを捻じ曲げてでも紹介したい日本酒があります。
その1本は、かつての『幻』。
生産量よりも評判が上回り、手に入らないとされていた山口県の銘酒です。
名を、『獺祭』
日本酒好きなら一度は耳にしたことのあるであろう1本は、私にとっては“きっかけの酒”です。
特に、『三割九分』。
この日本酒に出会ったからいまがあります。
嫌いだった日本酒を、好きに変えた奇跡の酒。
どんな日本酒で、どんな味わいなのか見ていきましょう。
『獺祭 磨き三割九分』ってどんな日本酒?
『獺祭 磨き三割九分』は、山口県の旭酒造がつくる純米大吟醸です。
旭酒造の大きな特徴は、“つくる日本酒すべてが純米大吟醸”というところにあります。
たとえば、いちばん手頃なものでも精米歩合は45%。
上を見上げれば、『23%』なんて飛びぬけたものまであります。
とにかく磨く。
米だけでなく、質も磨く。
精米歩合23%の『磨き二割三分』にいたっては、精米だけでも7日。
168時間もの時間をかけてから、酒造りが始まるのだそうです。
いったいなぜ、それほどの手間をかけるのか。
そこには、獺祭の目指す場所がありました。
“誰が飲んでもおいしい酒”
これ、当たり前のことを言っているように見えますよね。
ですが、とんでもない目標なんです、実は。
だって、嗜好品において『全員が認める』なんてことはまずあり得ないのですから。
たとえば、和牛だと最高ランクはA5。
よく聞くハイブランドだと松坂牛が有名ですよね。
「脂が甘い」
「こんなにやわらかいお肉、はじめて」
そんな感想をテレビで耳にしたことがあります。
ですが、すべての人がそれを求めているでしょうか?
「脂は少ないほうがいい」
「肉は噛みごたえがあったほうが好き」
そんな人だっているはずです。
なので、『誰が食べても(飲んでも)』というのは、とてつもなく実現の難しい目標なんです。
では、『獺祭』はどうなのか。
これは個人の感想になってしまうのですが、私はこう思います。
「これはこれでおいしいと、誰もが納得する日本酒」
誰にでも好みはあるものです。
ただ、獺祭は好みの1歩先をいきます。
たとえ好みとは違ったとしても、「これはこれでおいしい」と納得させる力があります。
特に、『磨き三割九分』。
コスパから見ても「お見事!」としか言いようがありません。
「ん? さっき褒めてた『磨き二割三分』じゃないの?」
と思いましたよね。
確かにそのとおりで、『磨き二割三分』も尋常ではない1本です。
ですが、価格もまた尋常ではないんです。
『磨き二割三分』は、720mlで5,000円超え。
日常で飲むにはあまりにも高く、買う機会にはなかなか恵まれません。
なので、あくまでも日常の範疇で。
買いたいときに買える1本として、『磨き三割九分』をイチオシします。
『獺祭 磨き三割九分』を飲んだ感想は?
これはもう、こうとしか言えません。
“おいしい”
実をいうと、私がはじめて飲んだ獺祭は、いまは無き『磨き五割』でした。
精米歩合50%の純米大吟醸で、価格も1,600円ほど(720ml)というリーズナブルな1本です。
この『磨き五割』を飲んで、私ははじめて日本酒を「おいしい」と思いました。
ですが、その感動をたやすく超えてきた日本酒があります。
その1本こそが、『獺祭 磨き三割九分』。
「日本酒ってこんなにおいしいのか……」と、心が震えた1本です。
香るべきところで香り、
広がるべきところで広がり、
抜けるところで抜け、
残るところで残る。
『日本酒を味わう』が、この1本にはあります。
もうね、ここまでカッコつけてそれらしい文章を書いてきましたが、それはもうここまでです。
素直にいきましょう。
とにかく上質!
しかも、日本酒度+6なのに、しっかりと甘みが感じられるんです。
この甘みがべらぼうにうまい!
+6だからこそ出せる甘みの質、とでも言いましょうか。
舌にのしかからずに広がる、無重力の甘みがたまりません。
しかも、締めるところはしっかり締めるんです。
辛口らしいスッキリ感もあるので、どこまでも飲めてしまいます。
「贅沢だから少しずつ飲みたい」
そんな気持ちを“いともたやすく”握りつぶす、惹くパワー。
これはもう、引力です。
「無重力だの引力だの、宇宙かよ」
と思ったかもしれませんが、まさに宇宙。
かつてカラオケで飲んだ『日本酒・冷』がもたらした、たった一度の「マズい」。
この一度の「マズい」が、私を日本酒から遠ざけました。
ですが、『獺祭』が引き寄せたんです。
出会わなければ、もう日本酒を飲むことはなかったかもしれません。
「俺、日本酒ダメなんだよね」
と、目線を外す人生だったかもしれません。
『磨き五割』で日本酒のうまさに気づき、『磨き三割九分』でその先があることを知る。
私にとっての特別な1本。
それがこの、『獺祭 磨き三割九分』なんです。
『獺祭』の気になる点
とはいえ。とはいえですよ。
良い点しかない日本酒など存在しません。
私にとっての「おいしい」が必ずしもあなたの「おいしい」ではないように、どこかに『違う』と感じる部分はあるものです。
なので、ちょっと探してみました。
………………
…………
……
なんでしょう。
考えてみても、味わいに対しては“お手本のような印象”しか出てきません。
強いて挙げるとすれば、角度が変わります。
というのも、気になる点が、獺祭の公式サイトに対してのものだからです。
“なんだか日本語が不自然”
伝えたい気持ちが強すぎて、詰め込みすぎているように感じます。
読むほうが音を上げる、とでも言いましょうか。
いまいちスッと入ってこないので、途中で離脱してしまいました。
「もう少しだけ、読む側の『知りたい』に寄り添ってくれたらいいのになあ」
というのが正直な感想です。
そうすれば、“わかりきったうまい酒”という遠い存在から、もっと親しみのある銘柄になるのではないかと感じます。
味とはまったく関係ないところですみません!
まとめ:『磨き三割九分』は、ただうまい。お手本のような純米大吟醸。
20代そこそこの頃に飲んだ、『きっかけの酒』である獺祭。
いまはもう秋田の日本酒しか飲んでいないので、『思い出のなかの酒』になっていたんです。
なので、不安でした。
『おいしい×思い出=美化』
いま飲むことで拍子抜けしたらどうしよう。
そんな、『思い出補正』への心配があったんです。
ですが、それはまったくの杞憂でした。
“おいしいものは、いまもおいしかった”
思い出のなかの味は飛びぬけていたし、さまざまな日本酒を飲んできたことで絶対の存在でもなくなりました。
それでも、私の根幹には『獺祭』があります。
『獺祭』の『磨き三割九分』がくれた衝撃を忘れることはありません。
はじまりは『五割』。
ですが、私の日常に日本酒を持ち込んだのは、紛れもなく『三割九分』なんです。
このきっかけを、あなたにも感じてほしい。
気になっているのなら、ぜひ一度飲んでみてほしい。
私はここで、あなたの背中を押します。
というわけで、今回はこのへんで。
ここまで長かったですよね。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。